新しい時代への歌
サラピンスカー「新しい時代への歌」を読みました。
去年読んだサラピンスカー「いずれすべては海の中へ」収録の「オーバー・ロードの聖母様」の前日譚の長編です。執筆された時系列としては、長編の方があとらしい。
「オーバーロードの聖母様」を読んだときは、未来の話だけど、わりと普遍的な音楽の話、今で言うと、JASRACの著作使用料とか、大手レーベルと契約することがミュージシャンの幸せなのかみたいな話だなと受け取ったんですが、
「新しい時代への歌」はスケール感が大アップして未来の、ディストピアになりつつある世界でもがくミュージシャンと、ディストピアになりつつある世界しか知らない若者の人生が交錯する。
なぜこの世界がディストピアになろうとしているのかというのが、テロと疫病のダブルパンチによるもので、
人々は安全を求めて集会を禁じ、家に閉じこもり、フーディ(あんまりうまく想像できてないんだけど、フード状の装身具で、VRみたいに没入感のあるネット世界になってるのかな?)の世界に逃避して、
スーパーウォリーという一大通販会社から家に生活必需品を届けてもらうのが当然みたいになっている。
コロナが流行する前に書かれた作品で、予言の書だと言われたりしていたらしいけど、レストランに衝立があるのとか、世界がそうなる前を知らない若者が都会に出て、他人の触れた手すりを恐れたり、ライブ会場で人が多くてパニックになってしまったりする姿を、すごいなあと思って読んでた。
予言の書みたいな持ち上げ方に嫌いだけど、そういうふうに思われるのもわかるというか。
(いやでもSFを予言の書だと思って読むやつなんてろくなやつじゃないと思う(暴言)から、これもまたひとつのフィクションとして楽しみましょうね)
主人公の1人はルース、ミュージシャン。オーバーロードの聖母様に登場するミュージシャンの若き姿。
もう1人はローズマリー。スーパーウォリーのカスタマーサポート窓口に勤務する若者。
え〜ローズマリー、同業者じゃん! ちょっと嬉しいな〜と思っていたら、すぐに退職したのでワロタ。
物語の中で登場する職業って何が1番多いのかしらとちょっと考えた。私立探偵? 冒険家? 小説家?
少なくとも、カスタマーサポート業務はトップ10に入らなさそう。どうも、小説に向かない職に就いている者です。
脱線しちゃった。当然のように女の人が女の人を口説く世界観なので良いね。
ジョニとローズマリーがいい仲になるとき、「お酒を飲んだでしょ。あとで後悔することにならない?」「触れるのは大丈夫? ためらったのがわかった」とジョニがめちゃくちゃ確認をとって合意を大切にしてくれて、ジョニ……好き……ってなった。
だからこそ、あとからこの2人が離れてしまうシーンを思って怖かった。
ビフォーでシルヴァめっちゃいいじゃん〜ってなってたから、アフターにシルヴァ再登場してニッコリ。
「オーバーロードの聖母様」にもシルヴァ出てるんですよね。シルヴァはルースの2歳下となってるんだけど、ビフォーの描写だとシルヴァの方が年上かな? と思ったので変更点なのかもしれないね。
オーバーロードの聖母様と違うところは、ホロライブの規模感がデカくなってるのと、フーディの存在のあたりかな。
冒頭の、テロ予告を受け、ホテルの外に着の身着のまま放り出された人々を慰撫するために行った駐車場でのライブがとても好きでした。(一番上に貼ってあるシーン)
いい本読んだな〜という満足感あった。良かった。
「いずれすべては海の中に」も読み返したので、オーバーロードの聖母様から好きなシーンを紹介しておきますね。これはもう時間SFじゃん(過言)


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