極めて私的な超能力
ブローガスト4日目。意外と書けますね。ためてるから。ブログ。
チャン・ガンミョン著。吉良佳奈江翻訳。
作者のチャン・ガンミョンは、ジャーナリスト経歴があって、映画「ケナは韓国が嫌いで」の原作「韓国が嫌いで」を書いていたりして、結構多岐にわたるジャンルを書いているけど、これがはじめてのSF短編集、という作家です。
表題作の「極めて私的な超能力」、おっしゃる通り、手から火が出るとかマッハで走れるみたいな超能力ではなくて、極めて私的で小規模な超能力の話をしているんだけど、
それが事実かどうかを確かめようのない超能力なので、事実って必要あんのかな。という気持ちになり、良かった。
「アラスカのアイヒマン」、"体験機械"で、ナチスのアイヒマンにとあるユダヤ人収容所の記憶を、ユダヤ人にはアイヒマンの記憶を与える、という話。物語の終わりではなく、エピソードとしてすごい幕引きが訪れるんだけど、他人の体験を参照できないことが人間を幸せにしていたのかも。というラストで良かった。テクノロジーが必ずしも勝利しない話。
「センサス・コムニス」、こないだマッシブアタックがフジロックで「自分の感情や思考は本当に自分のものなのだろうか」とって言ってたやつだなあと思いました。
作家の主人公(明らかに作者をモデルにしている)が、10年、売れるタイトルをつけてあげますよ、と提案されて心揺らいでるの好き。
「あなたは灼熱の星に」、あいのりみたいなやつを、火星でやってて、ヤバいなって思いました。(古いよ、例えが……)
母と娘の反逆の話で、良かったな。脳みそだけ火星に行っているの、かなり、雲天明(三体Ⅲ)だ~と思いました。
「アスタチン」これおもしろいよね。長編になってもよさそうなテーマ。
アスタチンという木星・土星圏を統べる総統の後継者としてつくられ、遺伝的要素と記憶を共有する主人公・サマリウムと兄妹たちが、
唯一のアスタチンになるため、”市民”という地位を持たないお互いを殺しあう話なんだけど、
その殺し合いのなかで、アスタチン(コピー元本人)が、自分を愛する存在を作ろうとして、どういじっても自分を愛することのない、魅力的な人間をつくってしまったことを知るのめちゃくちゃいいな~と思いました。
そしてサマリウムもアスタチンの要素を持っているから彼女に惹かれるんだけど、彼女はアスタチン的な要素をもつサマリウムを愛することはなくて、切なくて良かった。
彼女の存在が、自分という存在を見直すための鏡になったのはよかったけど、冷蔵庫の女かも……(死にました)
「データの時代の愛(サラン)」、これ好き。これ好きなんだけど、何が好きって、数年で若者の感覚が変わって、データを参照しない恋愛を、野蛮人のやることみたいな視線で見てくるところです。人間の”当然”って、ホント、当てになんないなあ。
コメント
コメントを投稿