ハヤカワSF15選

ハヤカワが電書セールをやっているぞ。14日まで。そんなわけでわたしのおすすめ15選です。

 ◆「戦闘妖精・雪風」シリーズ(既刊5巻)

◆「膚の下」(火星三部作)

◆「博物館惑星」シリーズ(既刊3巻)

◆「機龍警察」シリーズ(既刊7巻)

◆「グラン・ヴァカンス 廃園の天使I」(既刊2巻)

◆「月世界小説」

◆「三体」

◆「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

◆「わたしたちが光の速度で進めないなら」

◆「こうしてあなたたちは時間戦争に負ける」

◆「鋼鉄紅女」

◆「ミッキー7」

◆「侍女の物語」

◆「カエアンの聖衣」

◆「無伴奏ソナタ」


↑例によってリンクとかはないので、この順番で書くんだなあ~~~と思って見てください。

適当に読み飛ばしてください。



◆神林長平「戦闘妖精・雪風」シリーズ

人類は、南極大陸に突如として現れた通路を抜けた先にあるフェアリイ星で正体不明の敵・ジャムと戦うため、フェアリイ空軍を作った。主人公・深井零は情報収集のため「味方を犠牲にしてでも帰還すること」を至上命題とする偵察部隊に所属しており、そこに所属しているのは皆、機械がなにかの手違いで人間に生まれてしまったのだろうと言われる隊員ばかりだった(あらすじ)


ハナからシリーズとか言ってまとめて紹介し始めて15選とか言ってるのに15冊に収める気がなさ過ぎる。

現在既刊5巻(うち4巻は文庫化しています)、今年の末か、来年の頭に6巻の連載が始まる予定で、6巻で完結予定です!半世紀に及ぶ雪風シリーズに、今終止符が打たれようとしている! 読み始めるなら今!!

戦闘妖精・雪風はあまりにもわたしの”””人生”””すぎるため、あまり気軽に他人に勧められなくなってしまったのですがそれでも!! それでもお薦めさせていただきたい!!

なぜならば!! 2巻のグッドラック以降に新作が出ていることを知らない人が多すぎるから……(涙)

日本SF界で知らぬ人はいないぐらいの名作ですし!? OVAもあってSFオタク以外にもネームバリューがあるのに!? その後続いてるのを知られないのは悲しすぎる!! みんな読んでください!! 長平は、ちゃんと雪風を令和の物語にして語っていますよ!!


主人公深井零は、1巻で自分の愛機・シルフィード雪風(偵察のための戦闘機です)のことを恋人のごとく愛しているんですけど、2巻でようやく機体をより強力なメイヴに乗り換えた雪風が自分の恋人じゃないと気がつくんですよね。気がついてよかった~~~

ジャムに勝つには、雪風と深井の共生、つまり機械知性体と人間が共生する必要があると言うことが提示されるんですけど、雪風との蜜月が終わった深井は、雪風と自分の関係を「猛獣と猛獣使い」と例えてみたり、電子戦オペレータ・フライトオフィサの桂城彰に「自分たちは雪風にとって自立行動可能な偵察ポットだろう」と語ったりする。萌え萌えかよ……(機械に道具扱いされる人間ってとっても萌え萌えだから)


また、「機械知性体は人間の言葉で考えない」ということで、機械知性体はどのように思考し、その考えはどのように発露され、どのように人間が読み取るのか、という、「機械と言語」の話をテーマに据えて語っている。人間の言葉で。想像を絶する偉業じゃないでしょうか?

神林長平のファンは全員エピグラフ(扉に書かれたちいさな詩)が大好きなんですけど、

4巻アグレッサーズ戦闘妖精・雪風のエピグラフ

「きみが破壊した

 その門扉の先は

 言葉のない世界」

5巻インサイト戦闘妖精・雪風のエピグラフ

「世界は言葉の外にある」

あと2022年に、雪風シリーズを紀伊國屋書店で買うと神林長平のコメント付きレシートが出てくるという祭りが合ったんですけど、そのレシートに書かれていた

「言葉のない世界へおりてゆく...」

が好き過ぎて、ずっとうなっています。言葉を仕事にして言葉で食べている人が、言葉のない世界、言葉の外を模索しているって本当にすごすぎるから……。


あと普通に一般オタク萌え萌え情報なんですけど、4巻で出てきた新キャラ・日本空軍の田村伊歩が本当に最高すぎる。

みんな田村伊歩の話をもっとして欲しい、みんな田村伊歩を確かめて欲しい。破壊の化身なので。


https://www.hayakawabooks.com/n/n3779dfbc80dd

↑これはインサイト雪風が出たときのハヤカワのnoteですが(2025/2/20)、

〝読み継がれ約半世紀――〟

という秘伝のダシみたいな扱いを受けてる長平がおもしろいので見てください。



◆神林長平「膚の下」

荒廃した地球を離れ火星での250年間の凍眠を決断した人類は、地球の復興作業にあたる機械人を監視するため、人造人間アートルーパーを創造した。その一人、訓練部隊の慧慈軍曹は火星行きを拒む残留人一派と遭遇、交戦する。創造主から傷つけられた体験、そして機械人アミシャダイらとの出会いを経て、慧慈は自らの存在意義を問いなおし始めるが……。『あなたの魂に安らぎあれ』『帝王の殻』に続く「火星3部作」完結篇(ハヤカワ書房オンラインストアより引用)


これは火星三部作という神林長平のシリーズの完結編だよ。15選とか大嘘じゃないかと言わないでください。シリーズは1作の扱いですからね。

「あなたの魂に安らぎあれ」「帝王の殻」そして「膚の下」の順で書かれていますが、作品内の時系列としては、膚の下→帝王の殻→あなたの魂に安らぎあれで、逆向きに時間が進んで、どうしてそのような世になったか、という謎解きがなされていくようなイメージです。


火星三部作で一番好きなのが膚の下なんですけども。

膚の下って前2作に至る始まりの物語であり、そして、「被造物(人造人間)が、創造主である人間とどのようにして付き合うか」という話なんですよ。

今、ゲームとかでアンドロイドが出てきたとき、その顛末に厳しい目を向けてしまう理由はだいたい膚の下のせいです。

多感な時期に膚の下をくらってしまったら、その後の作品に膚の下以上のセンスオブワンダーを求めてしまうのは当たり前ではありませんか?(傲慢な消費者仕草)

”膚の下以降”という言葉が出来てもいいぐらいですからね。デトロイトビカムヒューマンをプレイしたときも、「コナーは『膚の下』になれや」とずっとキレてました。

そのぐらい、自分にとってエポックメイキングな作品でした。おすすめです。読んでね。

現時点で、自分的に膚の下ポイントが高い被造物は、映画「エイリアン・コヴェナント」なんですけど(やることなすこと慧慈と逆すぎるデヴィッド8とかいうおもしれーアンドロイドがよ……)、巨匠ってめちゃくちゃやっても許されるんかなあ。



◆菅浩江「博物館惑星」シリーズ(既刊3巻)

月と地球の重力均衡点の一つ、ラグランジュ3には小惑星帯からとってきた惑星をまるごと巨大な博物館にした〈アフロディーテ〉があった。そこには、人類が手に入れられるかぎりの動植物、美術品、音楽、舞台芸術が集められ展示されている。

主人公の田代孝弘は学芸員で、日々、博物館で起きるいざこざを解消するため走り回っていた(あらすじ)


博物館惑星、本当~~~~~~に大好き!!!!

手放しでいろんな人におすすめできる。希望の物語だから……

現時点で「永遠の森」「不見の月」「歓喜の歌」の3巻があります。

〈アフロディーテ〉の学芸員の多くは脳みそを、女神の名を冠したデータベース・コンピュータに直説接続している、という身体改造SFでもあり、直接接続されたデータベースを活用するのは芸術というジャンルで、

芸術って人間の営みなんですけど、こう、ハードなイメージの身体改造・身体拡張SFというジャンルで、ずっと人間の営みの話をしてくれるのって本当に嬉しい。


あとこれは連作短編みたいな小さめのお話がたくさん入っていて、結構気軽に読めたんですけど、どの巻も最後に全部きれいに回収されていくので気持ちが良すぎる。

小説がうますぎる。(あたりまえ体操)(星雲賞受賞作なんだよ)

2巻以降は、警備員の健と、彼と直接接続したディケ(接続者の健はダイクと呼んで運用している)の話になるんだけど、健とダイクの掛け合いが好き過ぎてずっと萌え萌えになっていました。

人間と、機械知性体のバディって、本当に最高で……(雪風が魂に刻まれてるオタクだから)



◆月村了衛「機龍警察」シリーズ

”至近未来”、近接戦闘兵器(通称キモノ・パワードアーマーみたいなやつ)が普及した日本で、警視庁・特捜部は1世代は進んでいるであろう新型兵器「龍機兵(ドラグーン)」を扱わせるため、傭兵と契約を行った。

旧態依然とした日本警察にとって、契約した傭兵は軋轢を生んでいたが、その中で、キモノを使った立てこもり事件が起き――(あらすじ)


またシリーズだよ。現在既刊7巻。これはね~、SF小説じゃなくて、”警察小説”なんですよね。

ミステリレーベルなので、ハヤカワ電書セールの対象外になっていることも多いですね。セールならラッキー。

この作品にたいして、よく引き合いに出されているのはパトレイバーでしょうか。警察所属の人間が、近接戦闘兵器に乗り、テロリストと戦ったりしますからね。

ただアクション小説でありつつ、話は警察内外の政治劇へと軸足をずらしていきます。重めの物語が好きな人にお勧め。


月村了衛は本気で小説がうまいので読んだことない人は読んだ方がいいですね~。

月村了衛はウテナとかの脚本をやっている脚本出身の小説家で、アクションが見えるんですよね。読むアニメといっても過言ではない。アニメ過ぎる。

ちなみに講談社のヤンマガからコミカライズが出ています。

シリーズで一番好きなのは、姿俊之が活躍する「機龍警察自爆条項」です。短編集「火宅」の表題作「火宅」はかなり小説がうまくて好きだ。度々読み返している。


月村了衛は土漠の花(幻冬舎)も、少年画報社でフクダイクミさんがコミカライズしています。

結構重苦しい話で好みが分かれると思うので、コミカライズの試し読みとかを読んでみて、好みの話だったら購入検討しても良いかも知れませんね。



◆飛浩隆「グラン・ヴァカンス 廃園の天使I」

仮想リゾート〈数値海岸〉、その中にある夏の区画では、人類がその仮想リゾートに訪れなくなったあともAIたちは終わらない夏を過ごしていた――(あらすじ)


みんな大好きグラン・ヴァカンス! これもシリーズものです。現2巻かな。

2巻目は短編集で、3巻にあたる〈空の園丁〉はSFマガジンにて連載中です。

これもね~~~結構暴力ある、そして倒錯的で、性的であり、とっても面白いです。

暴力描写がね、好きで。(でしょうね)

苦痛のネットに取り込まれるAIのシーンがちょうえっちで……とツイッターで言ってたら「私もそのシーンが一番エッチだと思っていました」と言うオタクが出てきてくれてかなりいい話だった。

直接的な性交渉の描写とかもあるんですけど、それ以外のシーンも、なんか、ずっとエッチなので、いいです(語彙力がないですね)

夏って、死の匂いがするから好きだな。仮想リゾートだからではなく、夏なのに全然暑そうじゃない雰囲気で好きです。

ちなみに2巻の短編集「ラギット・ガール」はちょう怖いです。

読み返すたび、AIの恐怖の感情を想起させるため仕組みを考える短編「クローゼット」で怖すぎて泣く。


はあ、これは既読人向けのアレですが、〈数値海岸〉を作ったドラホーシュ教授が、人間が求めているのは”リアル”ではなく”限りなくリアルな体験”だとして〈感情的似姿〉を作るんですけど、

あとでキムチョヨプの「わたしたちが光の速度で進めないから」の紹介をするんだけどそこに収録されている「感情の物性」とちょっと似ているかも知れないな。全然似ていないかも知れない。なんにもわかりません。



◆牧野修 「月世界小説」

――友人とゲイパレードを見に来ていた青年、菱屋修介は、晴天の空にアポカリプティック・サウンドが響くのを聞き、天使が舞い降りるのを見た。次の瞬間、世界は終わりを告げ、菱屋は惨劇のただなかに投げ出された。


↑これ書籍の後ろにかいてあるあらすじなんだけど、度々ツイッターでバズっていますね。

ものすごくBLが始まりそうな冒頭なんですけどね。片思いしていた友人とゲイパレードへ行くも、天使が舞い降りてきちゃいます。

これは普通にめちゃくちゃ名作なので、いつか読んで欲しいですね。

牧野修って反体制というか、反権力みたいなのがテーマなのか、力のないものが力のある物に立ち向かう話を良くしてくれるんですが、とってもいいです。大阪万博が決まった頃に刊行された「万博聖戦」もそういう話。まともに読んだのこの2作だけなんですがどちらも好きです。

グロテスクな表現なんかは好みが分かれますが、読んでみてもらいたいな。


◆劉 慈欣「三体」

劉 慈欣著、大森望、光吉さくら、ワンチャイ訳

応用物理学者の汪淼は、科学者が短い期間に自殺する事件を知り、停職中の警察官・史強と調査に乗り出すが、その過程で、目の前に正体不明のカウントダウンが刻まれるようになり――(あらすじ)


三体! 三体ですよ! 愛憎渦巻く三体!!

あらすじ書きながら(こういう話だったっけ……?)と思ってしまった。テンセント版三体の印象が強くなりすぎてなんか話のことが全然わからなくなっている。

三体は全3巻! 2巻・黒暗森林、3巻・死神永生! 前日譚として三体0 球状閃電があります。

もし書店で見かけてもひとまずXのことは気にしないでください、あれは公式ファンフィクション小説なので……

本当に面白いです。SF部分は。本当に面白い。仕事遅刻しそうになっても読み続けたぐらい面白い。

でも、女性の描き方が本当~~~にキツい!! 女はみんな天女みたいに美しくて、若くて、頭が良い。そして死にます。

なので、無理して読まなくていいんですけど、本当に面白いことをお伝えしておきますね!


テンセント版三体(中国製作)のドラマがU-NEXTにありまして、NetflixにはNetflix製作の三体もあります。

ドラマから入るのもありですね! いやでも別に入らなくてもいい(めっちゃ否定するやん)



◆アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」

アンディ・ウィアー著、小野田和子訳

語り手の男性は、コンピュータに質問をされる声で知らない部屋で目を覚ます。管がたくさん自分につながっていて、自分を生かしているが、自分の名前さえ思い出せない。ベッドは全部で3つあるが、自分以外のベッドには死体が横たわっていた。自分が寝ていた部屋の上部にはラボがあり、そこで試験管を落とした男性は、ものの落ちる速度が速すぎるため重力が地球とは異なっている事に気がつき、自分がいる場所が地球ではないことを知る。(あらすじ)


さ! 皆さん! プロジェクトヘイルメアリーの時間ですよ!! 

2021年で一番面白いSFと読んでも過言ではないし、2020年代で最も面白いSFの一つだと言っても多分過言ではないでしょうね。

既読SFオタクが全員「みんなにまっさらな状態で読んでもらいたい」というキラキラした瞳で内容を秘匿しすぎたせいで、映画の予告編が来るまでフォロワーにもホラー小説だと思われていたあのプロジェクトヘイルメアリーですよ!

いや。そんなことがありますか? 面白すぎる。SFオタクの善意ってほんと意味ない。

いや!? あのね!? 内容秘匿SFオタクとしてはね!? SF内ジャンルを知らないままで読んでもらいたかったの!!

ミステリオタクが「これおもしろい叙述トリックの本だよ」って言って薦めないじゃないですか!? あれです!! あれのつもりだったの!!

いや~~~まさかね~~~ブレアウィッチプロジェクトの仲間だと思われているとはつゆ知らず……

「火星の人」の作者だよ!? SFマガジンでめっちゃ推されてるんだよ!? ホラーな訳ないじゃん!! とか思っちゃったんですけど、

「火星の人」の作者かどうかなんてSFファンじゃなかったら知らないしSFマガジンでいくら推されててもみんな知らない。

みんながSFに興味があると思い込んでいた己の傲慢さを再確認し、しばらくへこんでいました。


プロジェクトヘイルメアリーなんですが、映画が作られておりまして、とっても楽しみにしています。

もうね、正直ね、無理そうなら本読まなくてもいいんで、映画は見てください。ライアンゴズリングが主演だよ!



◆キム・チョヨプ「わたしたちが光の速度で進めないなら」

キム・チョヨプ著、カン・バンファ、ユン・ジヨン訳

今回のセールで買って読みました。とても面白かったです。韓国SF界の旗手的存在ですね。もっと言うと日本で最も知られている韓国の作家の一人だと思います。


短編集なので、気軽に読めますね。機械が出てきてガシャーンガシャーンみたいなのがハードSFとすると、これはソフト寄りですね。

触ってみると柔らかいんだけど、芯があってすこしひんやりしています。そんな小説がたくさん読めます。

梨木香歩とか、サラ・ピンスカーを思い出しながら読んでいました。いずれも、他人は他人で、自分は自分、みたいな突き放したところがあって好きなんですよね。

冷たい、っていうのとも違っていて、ちゃんと愛のあるまなざしを向けてくれている。

フォロワーが「キムチョヨプは他者性の作家である」といっていたのがかなりすきで良かった。

自他境界がぱっきりしていて、わたしはわたしで、あなたはあなたで、本質を理解し合うことが出来なかったとしてもそれを努めて行うことは可能で、寄り添うことが出来るというのを言ってくれる。

プロジェクトヘイルメアリーとか三体みたいな、ばかでっかいSFももちろん大好きなんですけど、キムチョヨプは身近な話をやってくれていて、ばかでっかいSFの裏で取り残されてしまった人の話をしてくれる。

人気があるのわかったな~かなり良かった。既刊を読んでいこうと思います。



◆「こうしてあなたたちは時間戦争に負ける」

アマル・エル=モフタール、マックス・グラッドストーン著、山田和子訳

対立する勢力のエージェント、ブルーとレッドは、互いに時空を超え、自陣営に有利になるよう歴史を修正する活動をしており、互いを認知している。あるとき相手に自分のほうが有利だということを知らしめるために手紙をしたためるが、そこから、二人は”文通”を行うようになる(あらすじ)


クィア小説ですね。女と女が、互いを煽っていたと思っていたら、いつの間にかかけがえのない存在になっていき、互いを愛するようになり、守ろうとするようになる……という規模がでかいラブロマンス小説です。

自陣営にばれないようにあの手この手で手紙を送り合うのがかなりいいですね~。

このはなし、本当に好きで……とくにお互いがお互いを大切に思うようになった後の、身を切るような切々とした心を語るところがかなり好きです。

SFがすきで、かつ、ラブロマンスが好きな人におすすめですが、敵対する陣営に所属する者同士のラブロマンス……ということでかなり切ない気分になっちゃうかもしれません。



◆「鋼鉄紅女」

シーラン・ジェイ・ジャオ著、中原尚哉訳

渾沌という異星人の侵攻を受ける華夏は、渾沌の死骸から霊蛹機(ロボみたいなやつ)を作り、そこに男女一組の人間が乗ることで霊蛹機を制御し、渾沌と戦って街を守っていた。しかし、霊蛹機に乗ると女性は高確率で死んでしまう(あらすじ)



これもね。クィア小説です。主人公の武則天は、ロボに乗って死んだ姉の復讐のために彼女もロボに乗るんですよ。この女がかなり根性があって好きです。

主人公は、武則天、李世民、高易之の三人なんですけど、それぞれが、いろんな形で、世界から虐げられていて、それを内面化してしまっている部分もあるけれど、それに抗って、自分の手に自分自身を取り戻し、構造や世界を三人でぶっこわそう! っていう話です。根性がある。

そして!! これは!! 三人交際小説でして!!!! この三人が、付き合います。やったー助かった! これはオタクの妄想とかじゃないから!! 本当に付き合います! 「三角形は最強の図形です」って本当に言います!! オタクに都合が良すぎる????

今年邦訳の2巻が出る~! イェーイ楽しみ! ちなみにこれは翻訳が「マーダーボットダイアリー」の中原尚哉で、非常に読みやすいと評判。

ぬまがさワタリさんが、この小説のことを「侍女の物語+パシフィックリム」とおっしゃっていて、それだ!と思いました。嫌さと爽快さのバランスがすごい。


全然関係ないのですが、同じく三人での交際(オープンリレーションシップ)を題材にしている「私の最高の彼氏とその彼女」(ミン・ジヒョン著、加藤慧訳、イーストプレス)がめちゃくちゃ良くてですね、鋼鉄紅女の副読本にいかがでしょうか。SFじゃなくて恋愛小説なんですけど……。

社会的な要請によって人間は二人で付き合うべきだというモノガミー的価値観を内面化している主人公がオープンリレーションシップという考え方と出会う、という話で面白いです。

自分が意識していないぐらい当然だと思っていた価値観をぶっ壊されるのってセンスオブワンダーだな~って思います。



◆「ミッキー7」

エドワード・アシュトン著、大谷真弓訳

主人公ミッキーは、使い捨て人間(エクスペンダブル)で、何度死んでもタンパク質などから再生されて、危険な任務に着かされる、かなり嫌なタイプの不死身の人間。タイトルの通り7番目のミッキーが、なんやかんやあって、通信途絶して、やっとの思いで帰ったら、そこには既に8番目のミッキー、ミッキー8がいた……!!(あらすじ)


ポンジュノの映画「ミッキー17」、もう見た~!?!! 良かったねえ~~~~!!!!

ポンジュノの映画が原作と違って「17」なのは、ロバートパティンソンが死ぬところを、7回よりももっといっぱい見たかったかららしいです。素直な気持ち過ぎる、わたしもロバートパティンソンが死ぬところがたくさん見られて嬉しかったです。

原作だと、二人のミッキーは「セブン」「エイト」と呼び合っていて、とてもかわいいです。ナーシャを入れて3Pします。助かりますねえ!! 同じ顔カプと三人交際を同時に吸える革新的作品!!

そんな話でいいのか? もっとSF的におもしろいです、みたいな話をした方がいいんじゃないのか?

いや、でもそんな話ちょっとググったらいっぱい出てくると思うんで、こんな場末のブログでは、同じ顔カプ+三人交際の良さ……という話をします。

(ちなみにそれ目的で読もうとするとかなり味が薄いです、同じ顔カプ+三人交際の波動を感じられるSF、ぐらいの認識でお願いします。)

ポンジュノ映画のSF部分は、かなり「本当ですか?(疑いのまなざし)」になっていたので、原作読んで腑に落ちて良かったです。



◆「侍女の物語」

マーガレット・アトウッド著、斎藤英治訳

不妊化が進んだ世界で、支配階級の男性の子供を産むために、家庭にあてがわれる「侍女」の物語。(あらすじ)


これはHuluのドラマもありますね。(未視聴)

読みながらずっといやだいやだいやだいやだ……ってうなってた。半分泣いてた。

尊厳を奪われた女の話なんですけど、名前も奪うのほんまにやめろやカスがよ……と思ってたから、人間から名前を奪うのって有効なんだなあ。銀行口座を止められたシーンが一番怖かった。泣いた。

これのブログ書いたとき、めっちゃ口数少なくなってたもんね。やだったもん、純粋に。

でもこの物語が今求められているでしょうって思いました。読んでね。続編の誓願は1/3ぐらい読んで放置しています。



◆「カエアンの聖衣」

バリントン・J・ベイリー著、大森望訳

カエアン製の衣装は特別で、対立するザイオード人でさえも魅了し、高値で取引される。ペデルフォバースは借金のかたに違法な仕事を行い、そこで、カエアンでも最高の天才と言われたフラショナールが作ったフラショナール・スーツらしきものを見つける。(あらすじ)


新訳版ですね。ながらく絶版状態だったそうですが(日本語翻訳権独占!!早川書房!!!!)キルラキル大流行後に、キルラキルの着想元だとして新訳版が出ました。解説を中島かずきが書いてます。

天才の作ったスーツに魅了され、袖を通し、支配されるペデルフォバースって、本当に、萌え萌えで……(機械に道具扱いされる人間だけじゃなく、スーツに道具扱いされる人間も好きなんだ)(好きです)

”フラショナール・スーツは、自分の持ちものを探していた。すなわち、ペデル・フォバースを。”の一文で数年間萌え萌えだった。萌えの効率が良すぎる。



◆「無伴奏ソナタ」

オースン・スコット・カード著、金子浩、金子司、山田和子訳

「エンダーのゲーム」のカードの短編集。


無伴奏ソナタ、この世で一番好きな短編集かも知れないな。ことあるごとに読み返している。

ちょっとグロテスクで、清潔で、全編とびきりひんやりしている。

なんか全部”清潔な暴力”みたいなのがあって、でも、すごい暴力なんですよね。

「磁気のサラマンダー」「無伴奏ソナタ」が大好き。

無伴奏ソナタは、ものすごい音楽の才能を持った男が、音楽を作る職業・メイカーであることから追放されて、音楽を奏でると罰されるとわかっていても、音楽を奏で、歌を歌ってしまうという話なんですけど、これがすごくて、本当に大好きなんですよね。

今回このブログを書くにあたってあとがきを読んだら、カード自身の「書くことを禁じられたら、自分はどうなるだろう」という考えが着想元だと書いていて、禁じられて尚やりたいことがあって、貫きたい自分があるとわたしも信じたいのかも知れないな!と思いました。

こう……アウトローでいたいなという気持ちが、いつでもあります、アウトローです!(自称)



は〜これで15選です! 1万字ありました! いかがでしたか!?(やけくそ)

今回紹介した小説は、多かれ少なかれ、わたしの人生の一部になっている作品です。

だれかが読んでくれたらいいですね。


コメント

このブログの人気の投稿

大阪人のアテンドなしで行く!大阪のうまい店

実力のあるものがドシドシコピー本を作るべきだ! 糸綴じ編

9/21