NTL善き人
デイビッドテナント主演・NTL善き人見ました。
3人だけで入れ替わりながらいろんな役をやる舞台で、舞台装置は削ぎ落とされていてソリッドだが、役柄を変えながら、彼らがいろんな場所に行っているのが見える。
ヴィゴモーテンセン主演の映画もあるんですけど、そっちは見てないです。
大学教授が、ナチ党が台頭してきた時に迎合し、ヒトラーも著作を読んで彼を気に入りそのままずるずるとナチ党に協力していくことになる……
みたいな話だと認識していたんですが、障害者の安楽死を推進するT4作戦に直結しそうな論文を書かされたり、大学の焚書をやったり、水晶の夜も行って、最後はアウシュビッツまで行って終わる。
舞台上にほとんど物がないのに、焚書シーンは本を出し火を出すの怖いよ〜
ナチスの主張はおかしいと感じていても、高く評価されると自尊心が満たされ、
良心の呵責はあれど友人に自分の身の危険を冒すほどには親身になれず、
気が進まないなりに一つ仕事をすればまた仕事が出てきて……の繰り返してもう戻れないところまでいってしまうという、悲しいけど大いにありそうな話だなと思いました。
SSの少佐、ラベルを張り替えたレコードでジャスを楽しむ人で「スウィングしなけりゃ意味がない」だ……になり、
金髪碧眼の子供を作れと上から言われているのに子供ができない……のはなしでレーベンスボルンだ……死の泉だ……と思った。
ナチスの嫌なやつ全部やるじゃん! と思ってたら水晶の夜まで来たので、あ……あ……となった。
水晶の夜の演出が怖すぎる。暗転して物が割れる音とかが鳴るの怖いよ〜
水晶の夜で隣にくるユダヤ人医師の友人、絶対に妄想じゃん! と思いながら、自己正当化とかを行いそもそも人類が……とかめちゃくちゃデカすぎる話になるのわかりすぎて心が痛い。
友人、どこまで本当にいたんですか? 怖いよ〜
そしてラスト、ここまで散々脳内で鳴るバンドと音楽の話をされてきて、舞台の後ろがひらいて音楽が鳴って、「バンドがいた」というこのラストの夢のように美しいことよ。
"デイビッドテナントはSSの制服が似合っておらず良かったしカーテンコールの時に脱いで来てくれて良かった"と深緑野分先生が書いていて、カーテンコールで制服じゃなくてほっとしたのはわたしだけじゃなかった……、と思いました。
己の良心に従って"善き人"であることは難しく、魅力的な女や権力に抗うことも難しく、未来のリスクを分析することも難しく、友人のために自分を危険に晒す勇気を持つことも難しい。
これを見て、自分を省みて、自分は善き人ではないな……と自己嫌悪に陥って、日記書くの難しかったな。
兄のことを思って、そして兄と自分の関係のことを思った。
兄は、いわゆる"""ネトウヨ"""で、中国と韓国に対して異常な嫌悪感を持っている。
それでも、わたしは兄がネトウヨになる前のことを覚えているし、家族や友人に優しく、基本的に良心を持った成人男性であることも知っている。
兄の思想を真正面から咎めたことはなかったなと思って、いつでも「ええって、そういうの」と流すか、そもそもそういう話題にならないようテレビのチャンネルを変えたりしていた。
その場しのぎの対応しかとらず、善き人であることよりも、そのときラクな対応しかしていなかった。でも多分この先、兄の思想を否定できるかと言われるとしないと思う。
自分は決して善き人ではないことを認めるしかなくて、開き直って諦めるのではなくて、善き人でないことを認めながら、それでも善き人でいたいと願ったりし続けます。
地獄の炎に焼かれながらそれでも天国に憧れる、だ。(金田一少年の事件簿オペラ座館の殺人)
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